花の名前
ふとした瞬間に思い出すことがある。
電車に乗ってる時、好きだと言っていた本を見た時、コーヒーの香りを感じた時。
嬉しいことを嬉しいと素直に言う気持ち。
ちょっと調子に乗ってふざけた時の軽く怒った声。
考え事をする時に多くなる瞬き。
すこしさみしげに笑った顔。
仕草や、香りや、感触を、全部思い出す。ずるいよなぁ、と思う。
川端康成は
「別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」
と言った。
こんなロマンチックで女々しいこと、女はしないなぁと思ったし、そんな重いこと…と思ってた。
でも、自然と、相手の香り、相手の癖、相手の声、話し方、好きな本、好きな飲み物、一緒に行った場所、話したこと、みた映画を思い出してしまう。
自然とお互いに「花の名前」を教えあっていたのだなぁと、やっと分かった。
これからも、「花の名前」を教えあっていくのだろうな。どんな花があるかな。まだまだ知らないことだらけだ。
次にどんな花が咲くのか、楽しみだ。