大人になれなかった
「社会人になったら、学生時代の友達となんて疎遠になるよ、特に女は。」
母は伏し目がちに、そういった。
わたしは自分がしたことで、1人の友人を失った。信頼という意味で言えば、周りの友人もどれだけまだわたしを信じてくれているかも怪しい。それでも、「わたしはちゃんと好きだし分かってるよ」て言ってくれる友人もいる。
失ってしまった友人のことを大切していると、考えるだけ考えて、考えるばかりで行動しなかったわたしは、本当の間抜けだ。
届かなかった言葉は言わなかったのと同じことだ。
さぞかし彼女はわたしの弁明に苛立ちをおぼえただろう。わたしだってわたしの弁明に腹がたつ。
学生時代から、彼女のことを好きだし大切に思っていたけれど、彼女の強さ、彼女の奔放さ、彼女の正しさが、時にわたしには苦しかった。
「できるかできないかじゃなくて、やるんじゃないの?」
と怒る彼女の言葉は、きっと正論だった。だけど言いたい。あなたはできても、わたしにはできなかった。清く正しく美しくだけでは生きていけないのだと、声高に叫びたい衝動に駆られた。
それでも、彼女は圧倒的に強くて脆く、わたしは圧倒的に弱くて愚かだった。わたしはそんな彼女に勝ちたかったのだと、気づいた。
わたしの愚かなエゴと自己愛で傷つけた彼女は、笑っているだろうか。ちゃんと眠れてるだろうか。
もう二度と会えないだろう彼女の、幸せを遠くで願うしかない。それすらも、迷惑だろうけど。
強くて脆く正しい彼女は、確実にわたしにとって敵わない友人だった。
さようなら。
幸せになってください。